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「こんなリーダーはいやだ」の典型(笑)。実在のアギーレは映画よりヒドかった?

アギーレ/神の怒り 1972.jpgアギーレ/神の怒り 2.jpg アギーレ/神の怒り 1.jpg
アギーレ/神の怒り [DVD]」クラウス・キンスキー

アギーレ/神の怒り f.jpg 16世紀、スペインは、伝説の黄金郷エルドラドを求めて南米大陸に遠征隊を派遣していた。1560年、ゴンサロ・ピサロの指揮のもと、キトからアンデスの山に向かっていたスペインの探検隊も、エル・ドラドの発見を目指して険しい道を行っていた。12月25日、アンデスの最後の尾根まで進んだ部隊は孤立し、隊長のピサロは食料の調達と情報収集をする40名のアギーレ/神の怒り u.jpg分遺隊を選び出す。もし1週間以内に戻らなければ、残りの遠征隊は引きあげるとピサロは決定する。隊長にはウルスア(ルイ・ゲーハ)、副隊長にアギーレ(クラウス・キンスキー)、キリスト教アギーレ/神の怒り 4.jpg布教のための宣教師にカルバハル(デル・ネグロ)、スペイン王家の代表として貴族のグスマン(ペーター・ベルリング)、さらにウルスアの愛人イリス(ヘレナ・ロホ)とアギーレの娘フローレス(セシリア・リヴェーラ)も分遺隊に同行し、筏で川を下ることになる。しばらく行くと、その分遣隊も撤退を余儀なくされる。しかし、副隊長のアギーレは反乱を起こし、貴族グスマンを皇帝に擁立して独立を宣言。そのまま彼らはエルドラドを目指して出発する。筏で川を下るアギーレ一行は徐々に追い詰められていく―。

アギーレ/神の怒り k.jpg ヴェルナー・ヘルツォーク監督の1972年監督作で、ヴェルナー・ヘルツォークは30歳でこの作品を撮ったことになります。狂気染みたアギーレという男と彼に率いられる集団を描いたこの作品は、1975年のフランス映画批評家協会賞(外国語映画賞)を受賞し、2005年にはタイム誌が選ぶ歴代映画ベスト100に選出されています。黄金に憑かれた人間アギーレの、時に滑稽なまでの狂気を描いて秀逸ですが、最近観直してみて、組織心理学的にみても怖い話だなあと思いました。長年のサラリーマン生活を経て観直すと、こういう視点になるのでしょうか。アギーレって「こんな上司(リーダー)はいやだ」の典型でした(笑)。

 それにしても、このアギーレの無茶苦茶ぶりが凄いです。1561年1月6日(映画は、宣教師の日記として語られるスタイルをとる)、分遺隊の40名は4隻の筏に分乗して出発しますが、途中の急流で1隻が渦に巻き込まれ、岸壁から動けなくなります。1月6日、隊長のウルスアは兵士7人とインディオ2人を救助しようとしますが、副隊長のアギーレはこれに反対し、夜中に筏の上の仲間を部下に銃殺させ(何でもアギーレの言うことを聞く殺し屋みたいな部下が不気味)、さらに遺体を収容させないため、筏に大砲を撃ち込みます。

 結局、アギーレは最初からピサロに反逆し、エルドラドを自ら征服するつもりだったということになります。アギーレは暴力でウルスアとその部下を黙らせ、貴族のグスマンを新たな隊長に据え、公然と国への反逆宣言をして、グスマンをまだ見ぬエルドラドの皇帝に即位させるという、まさに暴挙に出ます。

アギーレ/神の怒り5.jpg その後も、救世主として歓迎してくれた現地人を黄金の在りかを知らないというだけで殺し(これには宣教師も噛んでいる)、ウルスアの処刑を許さなかったグスマンが亡くなるや否やウルスアを絞首刑に処し、アギーレの横暴と先住民の恐怖に恐れをなして逃亡計画を口にした隊員の首を撥ね...と、ますます狂気をエスカレートさせていきます。やがて、先住民の襲撃にも遭って次々に死んでゆく仲間の中で「俺こそ怒れる神だ!」と独り息巻くも、朽ちた筏の上に立つ彼の足元には、夥しい数の野生の猿がいるばかりで、これが彼の「夢の王国」なのかと―。どうみても彼の辿り着く先は、輝く黄金郷などはなく、惨めな死だろうという予感のもと、映画は終わります。

ロペ・デ・アギーレ.jpg ところで、実在したロペ・デ・アギーレという人物もこんな感じだったのでしょうか。調べてみると、本国にいた時は、自分に鞭打ちの刑を宣告した裁判官にストーカー行為を繰り返すなどしたそうで、もともとパラノイア的性格だったようです。このエルドラドを探す遠征の過程で隊長のウルスアを殺害し、貴族グスマンを傀儡としたのは事実のようです。さらに、スペインからのペルー国独立を宣言し、遠征に同行した宣教師、ウルスアの妻、グスマンにも死を命じたとのことです(映画よりヒドイ?)。

ロペ・デ・アギーレ(1510-1561)

 映画では最後、このまま川の上で猿に囲まれて死ぬともとれる絶望的な状況でしたが、実際にはオリノコ川を辿って大西洋岸に抜け、マルガリータ島(現ベネズエラ)のスペイン人の入植地を攻撃し、知事と女性を含む50人もの地元住民に死を命じ、彼の部下は集落を略奪したとのことです。

 さらに、1561年7月、スペイン国王フィリップ2世に自分が独立を宣言する理由を説明する手紙を送りますが、そのようなものが国王に受け入れられるはずもなく、彼はあくまで反逆者扱いのままであり、王立軍は彼の部下に恩赦を与えることによってアギーレを弱体化させ、バルキシメト(現ベネズエラ)の町でかつての彼自身の部隊によって補強された王立軍に包囲された末に捕縛され、処刑されたとのことです(包囲された際に自分の娘を殺害し、自身は銃撃に斃れたとの話もある。娘は映画では、DVDジャケットにもあるように先住民の矢に射られて死ぬ)。

 こうした激烈な人生だったため、幾つもの文学作品のモチーフになっているそうで、ヴェルナー・ヘルツォーク監督が取り上げたのも、それまでにそうした素地があったためだと思われます。ただ、これを映画にしようとは、それまで誰も思わなかったのではないでしょうか。映画冒頭の何百人もの探検隊が険しい山道を行くシーンだけでも、よくこれを撮ったなあと思わされるものでした。

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「アギーレ/神の怒り」●原題:AGUIRRE, DER ZORN GOTTES●制作年:1972年●制作国:西ドイツ●監督・脚本:ヴェルナー・ヘルツォーク●製作:ヴェルナー・ヘルツォーク/ハンス・プレッシャー●撮影:トーマス・マウホ●音楽:ポポル・ヴー●時間:93分●出演:クラウス・キンスキー/ヘレナ・ロホ/デル・ネグロ/ルイ・ゲーハ/ペーター・ベルリング/セシリア・リヴェーラ●日本公開:1983/02●配給:大映インターナショナル●最初に観た場所:大井武蔵野舘(84-02-18)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ(21-03-09)(評価:★★★★)●併映(1回目):「愛の絆」(ハンス・W・ガイセンドルファー)

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やはりクライマックスは船の山越えか。文化人類学的な視点の入った映画だったかも。

フィツカラルド dvd.jpgフィツカラルド 山越え.jpg フィツカラルド 2.png
フィツカラルド [DVD]」 クラウス・キンスキー/クラウディア・カルディナーレ

フィツカラルド01.jpg 19世紀末のブラジル・マナウスのオペラハウス。オペラ歌手エンリコ・カルーソの公演を聴こうとペルー・イキトスからボートを漕いで来たフィツカラルド(クラウス・キンスキー)とモリー(クラウディア・カルディナーレ)。会場にもぐり込んだフィッカラルドは、カルーソのテノールに聞き入る。アイルランド出身の彼の本名はブラ『フィツカラルド』(1982).jpgイアン・スウィーニー・フィツジェラルドだが、インディオたちは彼をフィツカラルドと呼ぶ。今は製氷業だが、かつてアンデスに鉄道を敷設しようとして破産した経歴の持主で、白人らは彼を奇人とみなしていたが、娼家経営の愛人モリーは良き理解者であり、インディオの子らも彼を慕う。彼はイキトスにオペラ・ハウスを建てようと決意するが、それには莫大な資金が必要で、ゴム成金たちには相手にされない。そこで彼は、自らがジャングルを切り拓いてゴム園を作ることを計画、モリーが出してくれた金で成金の一人ドン・アキリノ(ホセ・レーゴイ)から中古の蒸気船フィツカラルド tikuonnki.jpgを買い、パウル船長(ポール・ヒッチャー)、料理人ウェレケケ(ウェレケケ・エンリケ・ボホルケス)、機関士チョロ(ミゲル・アンヘル・フェンテス)らを雇う。"モリー号"と命名された船は修理を終えてアマゾン川に船出、彼のゴム園用地は流れの激しい"ボンゴの瀬"のあるウカヤリ川上流にあったため、彼はフィツカラルド 02.png船をパテリア川に進める。途中、中断された鉄道駅に寄り、レールを外して船に積み込む。船が進んで首刈り族の土地に入ると、乗組員らの多くは逃亡してしまう。フィツカラルドは操舵室の屋根上に蓄音機を置いてレコードをかけ、密林にオペラが流れるとインディオたちが姿を現わす。彼らは続々と船に乗り込んで来フィツカラルド 01.jpgるが、フィツカラルド一行に手を出さない。フィツカラルドは、パテリア川とウカヤリ川が最も接近したところで、船を川から揚げて山越えしてウカヤリ川に降ろすという計画をインディオに伝えると、酋長(D・P・エスピノサ)は協力するという。目的地に着いてレールを降ろし、ジャングルを切り拓き、滑車で船を引っぱり揚げる。7ヵ月後、遂に船はウカヤリ川に浮かぶ。祝杯に酔ったフィツカラルドらが寝ている隙に、インディオたちは船を激流に放つ。彼らは激流の荒ぶる魂を静める儀式として協力したのだった。フィッカラルドらを乗せたモリー号は、木の葉の如く激流を流されていく―。
   
フィツカラルド 00.jpg ヴェルナー・ヘルツォーク監督による1982年作品で、同年のカンヌ国際映画祭「監督賞」受賞作。完成まで4年半を要し、苛酷なロケのためスターが次々と降板していった末にフィツカラルドの役をクラウス・キンスキーが得たことは知られていますが、結果として、オペラハウス建設への情熱に憑かれたフィツカラルドを演じたクラウス・キンスキーはハマリ役でした(思えば彼は、同監督の「アギーレ/神の怒り」('72年)で既に、エル・ドラドへの夢に憑かれアマゾン川を遡行するピサロの分遣隊の副隊長を演じていたのだが)。

ヴェルナー・ヘルツォーク監督/クラウス・キンスキー

 結局フィツカラルドは何とかイキトス(1900年代始めにゴムブームが起き、街はゴム産業で知られていた)に帰り着くが、彼の計画自体は水泡に帰し、彼はモリー号をドン・アキリノに売り、その金でオペラ一座を雇って一度だけの船上オペラを上演する―。

フィツカラルド ラスト.jpg ラストの、数日後には自分の所有から離れるモリー号の船上で、オペラを聴きながらフィツカラルドが見せる陶酔と誇りと狂気が入り交ざった表情はなかなかですが(ヘルツォーク作品の中ではかなり爽やかなエンディング?)、この映画のクライマックスはやはり、この映画を観たことがない人でもビデオやCDのジャケットでその場面は知っていると思われる、例の蒸気船の山越えでしょう。

フィツカラルド yamage2.jpg ヘルツォーク監督、ホントに船を山越えさせてしまったなあという感じで、実写でここまでやるというのは当時でもスゴイと思いましたが(完璧主義者だったフリッツ・フォン・シュトロハイム(「愚なる妻」「グリード」)の系譜か)、CG全盛の今ではもうこんな撮影はあり得ないか。"ボンゴの瀬"に船が突っ込むシーンはさすがにミニチュアを使っていますが、これまで本チャンでやったらそれこそ死者が出ていたかもしれません。「山越え」でスペクタクル的には充分満足でした(アマゾン支流をゆっくり遡上するシーンも含め、劇場で観たい作品ではある)。

フィツカラルド03.jpg アギーレと同様フィッツカラルドも実在の人物に改変を加えて描いてるようですが、最初観た時は西洋肉食系人種の凄まじい執念のようなものを感じました。また、異文化の出会いの物語でもあったなあと。最初は、西洋人の自らの文化への自信のようなものを感じましたが(「オペラで未開の地を啓蒙してやる」みたいな)、最近観直してみて、ラストの方でフィツカラルドが、初めてナイヤガラ瀑布を見つけた西洋人の言葉をぼそっと語る場面があったことに気づき、ああ、自分のことをなぞらえていたのだなあと。つまり、人に語っても信じてもらえないような不思議な体験をしたということであり、そこに彼の異文化への畏敬のようなものを感じました。結構、文化人類学的な視点の入った映画だったかもしれません。

Fitsukararudo(1982)
Fitsukararudo(1982).jpg
フィツカラルド      .jpg「フィツカラルド」●原題:FITZCARRALDO●制作年:1982年●制作国:西ドイツ●監督・脚本:ヴェルナー・ヘルツォーク●製作:ヴェルナー・ヘルツォーク/ルッキ・シュティペティック●撮影:トーマス・マウホ●音楽:ポポル・ヴー●時間:158分●出演:クラウス・キンスキー/クラウディア・カルディナーレ/ホセ・レーゴイ/ポール・ヒッチャー/フィツカラルド c.カルディナーレ.jpgウェレケケ・エンリケ・ボホルケス/ミゲル・アンヘル・フェンテス/グランデ・オセFITZCARRALDO Claudia Cardinale.jpgロ/ペーター・ベルリング/デイヴィッド・ペレス・エスピノサ/パウル・ヒットシェル●日本公開:1983/07●配給:大映インターナショナル●最初に観た場所:東急名画座(83-04-16)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ(15-06-23)(評価:★★★★)
Claudia Cardinale in FITZCARRALDO
FITZCARRALDO Claudia Cardinale2.jpg

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見てるだけで楽しい。圧倒的に多いフランケンシュタイン物。パロディ映画にも楽しいものが。

図説ホラー・シネマ.jpg  図説 ホラー・シネマ2.jpg      怪奇SF映画大全.jpg
図説 ホラー・シネマ―銀幕の怪奇と幻想 (ふくろうの本)』('01年/河出書房新社、123ページ(21.4x16.4x1.2cm)) 『怪奇SF映画大全』('97年/国書刊行会、239ぺージ(30x23x2.4cm))
フランケンシュタイン dvd.jpg フランケンシュタインの花嫁 dvd.jpg ヤング・フランケンシュタイン.gif ノスフェラトゥ dvd.jpg ドラキュラ都へ行く dvd.jpg 5時30分の目撃者 vhs 5.jpg
フランケンシュタイン[DVD]」「フランケンシュタインの花嫁[DVD]」「ヤング・フランケンシュタイン〈特別編〉 [DVD]」「ノスフェラトゥ [DVD]」「ドラキュラ都へ行く[VHS]」「特選 刑事コロンボ 完全版「5時30分の目撃者」
下右ページはトッド・ブラウニング 監督、ベラ・ルゴシ主演「魔人ドラキュラ」('31年/米)のポスター
IMG_20220204_052826.jpg 同著者による『図説 モンスター―映画の空想生物たち』('01年/河出書房新社)に続くシリーズ第2段で、草創期(サイレント時代~1930年代)、繁栄と低迷(1940~1950年代)、復興と世代交代(1960年代以降)という流れで、各時代の名作を紹介、製作にまつわる裏話やエピソードなども交え解説しています。

 何よりもポスターやスチール写真が豊富で、よくこれだけ揃えたなあと。見ているだけで楽しく、表紙には「狼男」がきていますが、圧倒的に多いのはフランケンシュタインもので、次にドラキュラものがきて、狼男は3番目といったところでしょうか。映画会社IMG_20220204_134630.jpgでみると、戦前はボリス・カーロフ、ベラ・ルゴシ(上右)をホラー・スターに育てたユニヴァーサル、戦後はピーター・カッシングとクリストファー・リー(右上)をホラー・キングに育てたハマー・プロが中心なっています。

 それにしても、こんなにも多くのフランケンシュタイン映画、ドラキュラ映画が作られてきたのかと改めて驚かされ、そうした数多くの作品群の中でも、フランケンシュタイン映画に占めるボリス・カーロフと、ドラキュラ映画に占めるクリストファー・リーの重みは、それぞれの活躍した時代は異なるものの、圧倒的であるように思いました。

フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)2010.jpg イギリスの詩人シェリーの夫人メアリー・シェリー(1797-1851)原作の『フランケンシュタイン』は、文学史上でも最もよく知られた作品でありながら、原作は殆ど読まれていないということでも有名な作品ですが、「フランケンシュタイン」は怪物(クリーチャー)の名前ではなく、怪物を生み出したマッド・サイエンティストの名前です。

フランケンシュタイン 1931 ポスター.pngフランケンシュタイン 1931 01.jpg 現代のホラー映画をすっかり観慣れてしまうと、ジェームズ・ホエール(1889-1957)監督、ボリス・カーロフ主演の「フランケンシュタイン(FRANKENSTEIN)」('31年/米)に出てくる怪物も、漫画「怪物くん」のフランケンのようにどこか可愛いかったりもし、湖のほとりで少女と触れ合うシーンは、ビクトル・セリエ監督の「ミツバチのささやき」('73年/スペイン)でも、主人公の少年が観る映画の1シーンで使われました。

「フランケンシュタインの花嫁」.jpg   FRANKENSTEIN and old man.jpg フランケンシュタインの花嫁 1935 01.jpg
 本編で風車小屋に追い詰められて焼き殺された怪物を復活させて作った続編の「フランケンシュタインの花嫁」('35年)は、本編以上に面白くてBride of Frankenstein _.jpg笑えますが、但し、ラストは異性(と言っても、かなりキツイ感じの女フランケンシュタインなのだが)に愛されない男の悲哀を表していて、しんみりさせられます(これ、傑作)。因みに、監督のジェームズ・ホエールは、自らが同性愛者であることを早くから公表していました(女性嫌いだった?)。Bride of Frankenstein (1935)

 フランケンシュタイン映画では、フランシス・フォード・コッポラが「ドラキュラ」('92年/米、ドラキュラ伯爵役はゲイリー・オールドマン。石岡瑛子がこの作品でアカデミー賞衣裳デザイン賞を受賞)に続きフランケンシュタイン (1994年).jpg製作した、ケネス・ブラナー監督の「フランケンシュタイン」('94年/英・日・米)などもありましたが、フランケンシュタイン (1994年) dvd.jpgロバート・デ・ニーロが演じたクリーチャー(被造物)は、見かけは醜怪だけれど心性的には子どものようであるという設定でした(フランシス・フォード・コッポラは妖怪好きなのか? 一方のケネス・ブラナーの方は、この作品ではヴィクター・フランケンシュタイン博士役での主演も兼ねている)。クリーチャーが元々はセンシティブで知的な存在として描かれているなど、原作に忠実に作られているようですが、原作って結構混み入ったスト-リーだったのだなあと。2時間で収まりきらず、個人的には消化不良感あり。更にデ・ニーロのメイクに懲りすぎて、単なるホラー映画になってしまった印象も。「フランケンシュタイン Hi-Bit Edition [DVD]

YOUNG%20FRANKENSTEN2.jpgメル・ブルックス『ヤング・フランケンシュタイン』(1974).jpg フランケンシュタインのパロディ映画では、メル・ブルックス(1926- )監督のヤング・フランケンシュタイン」('74年/米)が通好みのコメディであり、ギョロ目の怪優マーティー・フェルドYOUNG FRANKENSTEIN.jpgマン(せむし男)やピーター・ボイル(怪物)など、脇役がいいです。オリジナルの「フランケンシュタインの花嫁」にも出てくる山小屋に住む盲目の老人役はジーン・ハックマン、ラストに小さくクレジットされていました。

「ヤング・フランケンシュタイン」マーティ・フェルドマン/ジーン・ワイルダー/テリー・ガー
  
ヘルツォーク「ノスフェラトゥ」1.jpgヘルツォーク「ノスフェラトゥ」2.jpg ドラキュラ映画の古典的作品で劇場で観たものは記憶にありませんが、70年代の作品でヴェルナー・ヘルツォーク監督の「ノスフェラトゥ」('79年/西独)は、フリードリッヒ・ヴィルヘルム・ムルナウ監督の吸血鬼映画の古典的作品「吸血鬼ノスフェラトゥ(不死人)」('22年/独、無声映画)のリメイク作品であり、「アギーレ/神の怒り」('72年/西独)などヘルツォーク作品でお馴染みの怪優クラウス・キンスキーが主人公のドラキュラ伯爵を演じていました。
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吸血鬼ドラキュラ (角川文庫).jpg ムルナウは、ブラム・ストーカーの小説『吸血鬼ドラキュラ』を原作に映画化するつもりが映画化権を得られず、それで「ドラキュラ伯爵」を「オルロック伯爵」に変えて19世紀初頭のドイツの小都市に吸血鬼が出現するという設定にし、その容貌も禿頭の特異なものとしたわけですが、イザベル・アジャーニ.jpgヘルツォーク/キンスキー版は、「ドラキュラ伯爵」に戻しながらも設定はムルナウ版を踏襲。全体として透明感のある映像で、ペストで住民が死滅した村の描写などは絶妙でしたが、それら以上に、クラウス・キンスキーの怪演ぶり、「キモさ」が際立っていた印象です(彼に噛まれる女性役は美貌のイザベル・アジャーニ。トリュフォーの「アデルの恋の物語」('75年/仏)で知られるフランスの人気女優だが、この作品でドイツ語で話しているのは、父親がアルジェリア人であるのに対し、母親はドイツ人であるため。「ノスフェラトゥ」の前年作のウォルター・ヒル監督のアクション映画「ザ・ドライバー」('78年/米)でみせたように英語も堪能)。

ドラキュラ都へ行く  映画宝庫.jpgドラキュラ都へ行く02.jpg ドラキュラのパロディでは(クリストファー・リーが「エアポート'77/バミューダからの脱出」('77年/米)で土左衛門姿で出てきた際に見せていた苦悶の表情も、ドラキュラのパロディと言えばパロディだったけれど)、たまたま「ノスフェラトゥ」と同じ年に作られたもので、本書にも紹介されている「ドラキュラ都へ行く」('79年/米、原題:Love at First Bite)という5時30分の目撃者.jpgジョージ・ハミルトンが主演し製作総指揮もした作品もありました(ジョージ・ハミルトンは「刑事コロンボ」の第31話「5時30分の目撃者」('75年)で犯人の精神分析医役を演じていた二枚目俳優で、ハリウッド社交界でもプレイボーイで鳴らした彼らしく、愛人が絡むエピソードだが、計画殺人ではなく衝動殺人になっているのがややプロット的には弱点か。ハミルトンは、「刑事コロンボ」の新シリーズ(通算第57話)「犯罪警報」('91年)でも人気テレビ番組のホストである犯人役を演じた)。
 「ドラキュラ都へ行く」という邦題タイトルは、フランク・キャップラの「スミス都へ行く」をもじったものですが、内容は無関係。楽屋ネタのギャグ満載の身内で楽しみながら作った感じの映画で、一緒に観に行った外国人女性にはすごく受けていましたが、字幕頼りの自分にとっては残念ながらさほどでも(映画字幕はセリフが相当端折られていたように思うが、DVD化はされていないようだ)。

 SFホラーまで領域を拡げた「映画ポスター+解説集」では、ロナルド・V・ボーストの怪奇SF映画大全('97年/国書刊行会)という大型本があり、こちらは本書よりも更にポスター中心であるため、これも見て楽しめます。


FRANKENSTEIN 1931 poster.jpg「フランケンシュタイン」●原題:FRANKENSTEIN●制作年:1931年●制作国:アメリカ●監督:ジェイムズ・ホエール●製作:カール・レームル・Jr●脚本:ギャレット・フォート/ロバート・フローリー/フランシス・エドワード・ファラゴー●撮影:アーサー・エジソン●音楽:バーンハルド・カウン●原作:メアリー・シェリーFRANKENSTEIN 1931.jpg●時間:71分●出演:コリン・クライヴ/ボリス・カーロフ/メイ・クラークメイ・クラーク.jpgエドワード・ヴァン・スローン/ドワイト・フライ/ジョン・ポールズ/フレデリック・カー/ライオネル・ベルモア●日本公開:1932/04●配給:ユニヴァーサル映画●最初に観た場所:渋谷ユーロ・スペース (84-07-21)(評価:★★★☆)●併映:「フランケンシュタインの花嫁」(ジェイムズ・ホエール)
メイ・クラーク

BRIDE OF FRANKENSTEIN2.jpg「フランケンシュタインの花嫁」●原題:BRIDE OF FRANKENSTEIN●制作年:1935年●制フランケンシュタインの花嫁 1935 poster.jpg作国:アメリカ●監督:ジェイムズ・ホエール●製作:カール・レームル・Jr●脚本:ギャレット・フォート/ロバート・フローリー/フランシス・エドワード・ファラゴー●撮影:ジョン・J・メスコール●音楽:フランツ・ワックスマン●時間:75分●出演:ボリス・カーロフ/エルザ・ランチェスター/コリン・クライヴ/アーネスト・セシガー●日本公開:1935/07●配給:ユニヴァーサル映画●最初に観た場所:渋谷ユーロ・スペース (84-07-21)(評価:★★★★)●併映:「フランケンシュタイン」(ジェイムズ・ホエール)
「フランケンシュタインの花嫁」公開時ポスター。「カーロフ」の苗字が冠のように載っている。(本書より)

FRANKENSTEIN 1994 2.jpgFRANKENSTEIN 1994.jpg「フランケンシュタイン」●原題:FRANKENSTEIN●制作年:1994年●制作国:イギリス・日本・アメリカ●監督:ケネス・ブラナー●製作:フランシス・フォード・コッポラ/ジェームズ・V・ハート/ジョン・ヴィーチ/ケネス・ブラナー/デビッド・パーフィット●脚本:ステフ・レイディ/フランク・ダラボン●撮影:ロジャー・プラット●音楽パトリック・ドイル●原作:メアリー・シェリー●時間:123分●出演:ロバート・デ・ニーロ/ケネス・ブラナー/トム・ハルス/ヘレナ・ボナム=カーター/エイダン・クイン/イアン・ホルム/ジョン・クリーズ/シェリー・ルンギ/リチャード・ブライアーズ/アレックス・ロー●日本公開:1995/01●配給:トライスター・ピクチャーズ(評価:★★★)

ジーン・ワイルダー/マデリン・カーン
「ヤング・フランケンシュタイン」マデリンカーン.jpg「ヤング・フランケンシュタイン」2.jpgヤング・フランケンシュタイン.gif「ヤング・フランケンシュタイン」●原題:YOUNG FRANKENSTEN●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:メル・ブルックス●製作:マイケル・グラスコフ●脚本:ジーン・ワイルダー/メル・ブルックス●撮影:ジェラルド・ハーシュフェルド●音楽:ジョン・モリス●原作:メアリー・シェリイ●時間:108分●出演:ジーン・ワイルダー/ピーター・ボイル/マーティ・フェルドマン/テリー・ガー/マデリーン・カーン/ジーン・ハックマン●日本公開:1975/10●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:飯田橋ギンレイホール (78-12-14) (評価:★★★★)●併映:「サイレントムービー」(メル・ブルックス)

「ノスフェラトゥ」2.jpg「ノスフェラトゥ」01.jpg「ノスフェラトゥ」●原題:NOSTERTU. PHANTOM DER NACHT●制作年:1979年●制作国:西ドイツ●監督・脚本・製作:ヴェルナー・ヘルツォーク●撮影:イェルク・シュミット=ライトヴァノスフェラトゥ(1978)[A4判].jpgイン●音楽:ポポル・ヴー●時間:107分●出演:クラウス・キンスキー/イザベル・アジャーニ/ブルーノ・ガンツ/ロラント・トーポー/ワルター・ラーデンガスト/ダン・ヴァン・ハッセン/ヤン・グロート/カールステン・ボディヌス●日本公開:1984/10●配給:ドイツ文化センター●最初に観た場ドイツ文化センター 青山.jpgドイツ文化センター 2.jpg所:青山・ドイツ文化センター(84-10-07)(評価:★★★☆)●併映:「ヴォイツェック」「カスパーハウザーの謎」(ヴェルナー・ヘルツォーク) 「映画パンフレット ノスフェラトゥ(1978作品) 発行:㈱パルコ(A4) 監督:ヴェルナー・ヘルツォーク 出演:イザベル・アジャーニ

ドイツ文化センター 1962年、青山通り付近にオープン

ドラキュラ都へ行く01.jpg「ドラキュラ都へ行く」●原LOVE AT FIRST BITE.jpg題:LOVE AT FIRST BITE●制作年:1979年●制作国:アメリカ●監督:スタン・ドラゴッティ●製作・脚本:ロバート・カウフマン●撮影:エドワード・ロッソン●音楽チャールズ・バーンスタイン●時間:96分●出演:ジョージ・ハミルトン/スーザン・セント・ジェームズ/ディック・ショーン/アート・ジョンソン/リチャード・ベンジャミン/シャーマン・ヘムズリー●日本公開:1979/12●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:日比谷・みゆき座(79-12-15)(評価:★★★)

5時30分の目撃者 vhs.jpg刑事コロンボ(第31話)/5時30分の目撃者.jpg「刑事コロンボ(第31話)/5時30分の目撃者」●原題:A DEADLY STATE OF MIND●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:ハーベイ・ハート●製作:エヴァレット・チェンバース●脚本:ピーター・S・フィッシャー●ストーリー監修:ピーター・S・フィッシャー●音楽:バーナード・セイガル●時間:73分●出演:ピーター・フォーク/ジョージ・ハミルトン/レスリー・ウォーレン/スティーブン・エリオット/カレン・マックホン/ブルース・カービー/ライアン・マクドナルド/ジャック・マニング/フレッド・ドレイパー/ウィリアム・ウィンターソウル/ヴァンス・デイヴィス/レッドモンド・グリーソン/グローリー・カウフマン●日本公開:1976/12●放送:NHK(評価:★★★☆)特選 刑事コロンボ 完全版「5時30分の目撃者」【日本語吹替版】 [VHS]

《読書MEMO》
是枝裕和監督の選んだオールタイムベスト10["Sight & Sound"誌・映画監督による選出トップ10 (Director's Top 10 Films)(2012年版)]
 ●ラルジャン(ロベール・ブレッソン)
 ●恋恋風塵(ホウ・シャオシェン)
 ●浮雲(成瀬巳喜男)
 ●フランケンシュタイン(ジェームズ・ホエール)
 ●ケス(ケン・ローチ)
 ●旅芸人の記録(テオ・アンゲロプロス)
 ●カビリアの夜(フェデリコ・フェリーニ)
 ●シークレット・サンシャイン(イ・チャンドン)
 ●シェルブールの雨傘(ジャック・ドゥミ)
 ●こわれゆく女(ジョン・カサヴェテス)

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27歳まで「言葉」というものの存在を知らなかった聾者に手話で言葉を教えた記録。

0言葉のない世界に生きた男.jpg言葉のない世界に生きた男 シャラー.jpg A MAN WITHOUT WORDS〈Schaller, Susan〉.jpg カスパー・ハウザーの謎es.jpg
言葉のない世界に生きた男』(1993/07 晶文社) "A MAN WITHOUT WORDS" 〈Schaller, Susan〉映画「カスパー・ハウザーの謎」('74年/西独)

 聾者のため手話通訳者だった本書の著者スーザン・シャラーが、27歳になるまで言葉を喋れないどころか「言葉」というものの存在を知らなかった聾者のメキシコ青年イルデフォンソと出会い、彼に手話で言葉を教えていった記録。

 イルデフォンソは、ものに名前があるということを知らず、のっけから彼女は大苦闘しますが、彼が最初の1語(それは「ネコ」という名詞だった)を理解する場面は、ヘレン・ケラーがサリバンの導きで「水」という言葉を獲得した場面のように感動的、但し、ヘレンが歓びにうち震えたのに対し、イルデフォンソは、今までの自らの無知を想ってさめざめと泣く―。

 同じ名詞でも抽象名詞を教えるのは難しく、名詞や形容詞は何とか理解できても、動詞、前置詞、構文、時制と学習が進むにつれ、大きな壁が立ちはだかり、彼女は、知恵遅れの男性を薬で天才にしたが最終的にまた元に戻ってしまうというダニエル・キースの『アルジャーノンに花束を』の話に、自らの行為を重ねてしまう―。

カスパー・ハウザーの謎.jpg野性の少年.jpg でも、努力家で且つ研究熱心な彼女は、「アヴェロンの野生児」や「カスパー・ハウザー」といった先駆的研究資料を調べ、状況打開の糸口を見出そうとしますが、これらは、フランソワ・トリュフォー監督の「野生の少年」('69年/仏)や、「小人の饗宴」('70年/西独)のヴェルナー・ヘルツォーク監督の、カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリ及び国際映画批評家連盟賞を受賞した「カスパー・ハウザーの謎」('77年/西独)でもよく知られているケースで、18・19世紀には"野生児"の発見が話題になり大いに研究されたものの、その後、こうした事例が少ないこともあって、米国などでも、こうした特殊環境で成人した聾者への対処方法を記したものが殆ど無かったことが窺えます。

カスパー・ハウザーの謎」.jpg 因みに「カスパー・ハウザーの謎」は、19世紀初頭のドイツで、親に捨てられ地下室に閉じ込められ、外界との接触を断たれていた若者が、十数年を経て発見され、周囲の努力で知性を回復していく様を、事実に基づき記録映画風に描いた作品ですが(知性を獲得することで世間の人々の自分に対する偏見を肌身に感じるようになる点が悲劇的)、但し、彼が本当に野生児であったのかどうかはこの映画でははっきりしないように思えました(実際には現代においても、親に虐待され、結果として言語教育を全く受ける機会が無かったというケースは、米国などでは珍しいことではないらしいが、そうした状態イコール"野生児"と言えるかどうか)。

カスパー・ハウザーの謎     .jpgカスパー・ハウザーの謎 poster.jpg 映画でカスパー・ハウザーを演じたブルーノ・S は、幼い頃から精神病院に入れられ、何度も脱走を繰り返し、26歳で退院して世間に出たという特異な人物で、実人生が若干カスパー・ハウザーの人生に被るところもあって、演技していうというより素のままぽくって、それでいてリアリティがありました。

「カスパー・ハウザーの謎」輸入版ポスター

 本書の後半において、スーザンの超人的な努力により手話をマスターしたイルデフォンソでしたが、彼女によるカリキュラムを終えた後、一旦は音信が絶えてしまいます。しかし、その後も研究を続ける彼女が、暫くしてイルデフォンソを探し出し、聾者のコミュニティにいる彼を訪ねてみると、そこには聾者同士マイム(身振り)でコミュニケーションをとり合う彼の姿があった―。

 その姿に、言葉を獲得する以前の人類社会のコミュニティをスーザンは重ね合わせてみるのですが、言語学研究という観点から見ると道半ばという印象もやや受けました。しかし、もともと学者では無くパートの手話通訳者であった彼女がイルデフォンソをここまで導いたということだけで既に感動的なヒューマン・ドキュメントであることは確かで、「レナードの朝」で知られるオリバー・サックス博士が、彼女の努力と成果に多大の関心を寄せ、本書に序文を寄せています。


lカスパー・ハウザーの謎b85bk3.jpg「カスパー・ハウザーの謎」b1.jpg「カスパー・ハウザーの謎」b2.jpg「カスパー・ハウザーの謎」●原題:JEDER FUR SICH UND COTT GEGEN ALLE●制作年:1974年●制作国:西ドイツ●監督・製作・脚本:ヴェルナー・ヘルツォーク●撮影:ヨルグ・シュミット・ライトワイン/クラウス・ウィボニー●音楽:パッヘベル/オルランド・ディ・ラッソ/アルビノーニ/ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト●時間:110分●出演:ブルーノ・S/ワルター・ラーデンガスト/ブリジット・ミラ/ハンス・ムゼウス/ミカエル・クロエシャー●日本公開:1977/01●配給:欧日協会●最初に観た場所:青山・ドイツ文化センター (84-10-07)(評価:★★★☆)●併映:「ノスフェラトゥ」「ヴォイツェック」(ヴェルナー・ヘルツォーク)

「カスパー・ハウザーの謎」 HDリマスター [Blu-ray]


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